建設コラムColumn
危険物倉庫とは、引火性や爆発性のある危険物を安全に保管する専用施設です。危険物倉庫を設置するには、厳しい法規制を守ることが不可欠です。本記事では、危険物倉庫の設置に必要な基準や具体的な申請手順について詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。
危険物倉庫とは危険物を安全に保管するための専用施設
危険物倉庫は、引火性・爆発性など危険な物質を安全に保管するための施設です。これらの物質は扱いを間違えると重大な災害を引き起こす可能性があるため、特別な設備や厳格な管理が求められます。危険物倉庫について理解を深めるために、まずは「危険物」の定義から確認しましょう。
消防法における危険物とは
消防法では火災や災害による被害を防止するために、危険物の取り扱いに関する詳細な規定が設けられています。危険物は「引火性や発火性を持つ物質、または燃焼を促進する物質」として定義され、特に危険性度が高いと判断された物質はその保管建物が規制されます。
例えば、引火点が250℃未満の液体(動植物油を除く)は「危険物」として分類されます。また、施設の構造や消火設備、危険物取扱者の資格なども消防法に基づいて細かく定められています。指定数量以上の危険物を扱う施設は、基準が適用され、消防当局の許可が必要です。
危険物倉庫とは
危険物倉庫は、消防法に基づき、指定数量以上の危険物を保管・取り扱うための施設です。工場・倉庫・ガソリンスタンドなどで、大量の危険物を安全に保管する役割を果たしています。
これらの倉庫は、火災や爆発などのリスクを最小限に抑えるため、耐火構造や防火設備を備えています。
危険物倉庫より規制が少ない倉庫に「少量危険物貯蔵取扱所」があるので、以下で詳しく見ていきましょう。
少量危険物貯蔵取扱所とは
少量危険物貯蔵取扱所は、指定数量以下の危険物を保管・取り扱う施設です。危険物倉庫に比べて規制が緩やかで、許可も不要ですが、指定数量を超えない範囲での適切な管理が義務付けられています。
この施設は、一般の事業所や小規模な工場で、比較的少量の危険物を安全に保管するために利用されています。危険物倉庫に比べて設置条件や管理基準が簡略化されており、小規模事業者にも扱いやすいことが特徴です。
危険物倉庫の3つの基準(位置・規模・構造)
危険物倉庫は、危険物を安全に保管するために基準が定められています。これらの基準は、位置・規模・構造に分類され、それぞれが火災や爆発のリスクを最小限に抑える役割を果たしています。
位置の基準
危険物倉庫の位置に関する基準では、周囲の保安対象物と一定の距離を確保することが求められています。火災や爆発が発生した場合に、周囲の住民や施設への被害を最小限に抑えることが目的です。保安距離と保有空地の2つの要素が含まれているため、次の項目で詳しく説明します。
保安距離
保安距離とは、危険物倉庫と周囲の保安対象物(住居・学校・病院・重要文化財など)との間に確保すべき安全な距離のことを指します。この距離は、火災や爆発が発生した場合に周囲への影響を最小限に抑えるために設けられています。
具体的には、次のように必要な距離が定められています。
保安対象 |
必要な距離 |
製造所等の敷地外にある住居 |
10m以上 |
高圧ガスの施設 |
20m以上 |
学校・病院・劇場など多数の人を収容する施設 |
30m以上 |
重要文化財・重要有形民俗文化財・史跡など |
50m以上 |
また、高圧ガス施設や特別高圧架空電線の周辺でも、それぞれに応じた適切な距離を取る必要があります。
保有空地
保有空地とは、危険物倉庫の周囲に設定される空き地のことを指します。火災の拡大を防止し、消防活動をスムーズに行うためのスペースです。
保有空地の幅は貯蔵する危険物の量に比例して広く取る必要があり、特に指定数量の2倍以上の危険物を貯蔵する場合は、空地の幅をさらに広く設定することが義務付けられています。倉庫自体の耐火性能が耐火構造でない場合、より広い保有空地が求められます。
屋内貯蔵所の保有空地幅を一覧表にまとめてみました。
指定数量の倍数 |
耐火構造の場合 |
耐火構造以外の場合 |
5以下 |
ー |
0.5m以上 |
5〜10 |
1m以上 |
1.5m以上 |
10〜20 |
2m以上 |
3m以上 |
20〜50 |
3m以上 |
5m以上 |
50〜200 |
5m以上 |
10m以上 |
200超 |
10m以上 |
15m以上 |
規模の基準
火災や爆発の影響を最小限に抑えるために、危険物倉庫の建物の高さや床面積に制限があります。具体的には以下のとおりです。
- 倉庫の軒高は6m未満で平屋であること
- 床面積は1,000㎡以下
これらの規模の基準は、安全性と管理の効率性を両立させるために設けられています。
構造の基準
災害時に危険物が外部に漏れ出すのを防ぐために、耐火性能や防火設備の設置が求められます。
例えば屋根は軽量金属板などの不燃材料で、壁・柱・梁・床は耐火構造であることが義務付けられています。窓や出入り口には防火設備を設置し、万一の火災に備えた安全対策を施します。床は耐火性に加えて液体が浸透しない構造でなければならず、必要に応じて蒸気排出設備や避雷設備の設置も行います。採光や照明、換気設備も設け、危険物の取り扱いに必要な環境を作りましょう。
危険物倉庫の申請手続き【5ステップ】
危険物倉庫を新たに設置するには、法令に基づいた申請手続きが欠かせません。具体的には以下の5つのステップを踏むことで、安全で法令に適合した危険物倉庫を設置できます。
- 所轄消防との事前協議を行う
- 設置許可を申請する
- 設置許可証を受領して工事を開始
- 工事中間検査を実施する
- 完成検査を申請して検査を受ける
1.所轄消防との事前協議を行う
危険物倉庫の設置で最初に行うのが、所轄の消防署との事前協議です。設置場所や倉庫の設計が消防法などの規制に適合しているかを確認するために行います。この段階で消防署としっかり協議しておけば、後の手続きがスムーズに進み、設置許可も取りやすくなります。
2.設置許可を申請する
次は、市区町村の役所に危険物屋内貯蔵所としての設置許可を申請します。自治体によって提出書類や申請手順が異なるため、詳しくは地域のホームページをご覧ください。
3.設置許可証を受領して工事を開始
市区町村から設置許可証を受け取ると、工事を始められます。もし許可証なしで着工した場合、後で問題が見つかって設計変更を迫られる可能性があります。許可証があれば工事が適法に進められる裏付けになるため、必ず着工前に設置許可証を入手しましょう。
4.工事中間検査を実施する
必要に応じて中間検査を行います。この検査で、工事が計画通りに進んでいるか、また法令に適合しているかを確認します。中間検査を省くと後で修正が必要になる可能性があるため、計画に組み込んでおきましょう。
5.完成検査を申請して検査を受ける
最後に、工事が終わったら完成検査を申請します。危険物倉庫が設計通りにできているか、安全性は確保されているかを確認する大切なステップです。完成検査に合格すれば、自治体から完成検査証がもらえ、正式に危険物倉庫として使えるようになります。
まとめ
今回は危険物倉庫について、基準や申請手続きを解説しました。特に、保安距離の確保や耐火性能を備えた設計は、火災や爆発のリスクを最小限に抑える重要なポイントです。危険物倉庫を安全に運用するために、以上の内容を踏まえて適切な倉庫を作りましょう。
なお、長野県・山梨県で危険物倉庫の建設をお考えの方は、ぜひヤマウラへご相談ください。豊富な経験を活かし、安全かつ適法な倉庫を建設できるようサポートいたします。