建設コラムColumn
近年、日本の夏は記録的な猛暑となることが多く、工場内の温度が40℃を超える事例も珍しくありません。このような過酷な環境は、従業員の健康と安全、そして企業の生産性に深刻な影響を与えます。建設業界の専門家として、効果的な暑さ対策について詳しく解説いたします。
目次
2025年6月施行の法規の法規制強化への対応
労働安全衛生規則改正の背景
近年の気候変動の影響から、夏の時期では気温の高い日が続き、職場における熱中症による労働災害が増加傾向にあります。厚生労働省の調査によると、令和6年における休業4日以上の死傷災害は、1,257人と調査開始以来最多となっています。特に、死亡災害については3年連続で30人以上となっており 、その対策が重要とされていました。
労働安全衛生規則改正による義務化
2025年6月1日から、労働安全衛生規則が改正され、事業者に対して熱中症対策が法的義務となりました。暑さ指数(WBGT値)が28℃以上、または気温31℃以上の環境で連続1時間以上、または1日4時間を超える作業を行う場合、以下の措置が義務付けられています:
- 熱中症患者や患者を見つけた者が報告するための体制整備・周知
- 緊急連絡網、熱中症の重篤化防止するための措置の実施手順の作成・周知
違反した場合は罰則もある
規則に違反した場合、罰則が科される可能性があります。6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。これは単なるガイドラインではなく、法的拘束力を持つ義務であることを認識する必要があります。
なお、会社としては大切な従業員の安全、快適な職場環境を守る意味でも暑さ対策をすることはとても重要です。まずは職場環境を確認してみましょう。
工場内が暑くなる主な原因とは
なぜ、工場内が暑くなってしまうのか、主な原因を考えてみましょう。
工場内の温度上昇には、構造的、運用的といった様々な要因があります。
要因について、具体的にご紹介いたします。
温度上昇の構造的要因
建物・設備など構造の面からの要因が大きいです。下記の要因を改善することが効果的です。
1. 金属製屋根からの熱侵入:折板屋根や波型スレートの高い熱伝導率
2. 遮熱・断熱性能の不足:遮熱・断熱材の未設置、低性能または劣化
3. 換気能力の不足:適切な空気循環システムの欠如
温度上昇の運用的要因(機械設備等)
機械設備等運用面での要因は以下になります。
- 設備からの排熱:溶接機、乾燥炉等の高温設備
- 照明からの発熱:旧式の水銀灯や蛍光灯
- 作業密度の高さ:狭いスペースでの集約的作業
建物の具体的な暑さ対策
前述の要因を踏まえ、具体的な暑さ対策をご紹介します。
屋根断熱改修
インシュレーション工法(カバー工法)の導入
既存屋根の上にグラスウール等の断熱材を敷設し、その上に新しい折板屋根を施工する方法です。
屋根からの熱侵入が大きな影響を与えている為、工場全体で考えると屋根の断熱改修は効果が大きいと言えます。
この工法の特徴:
- 二重葺き構造と断熱材の充填により、断熱性・防音性に優れる
- 外部からの熱の出入りを制御し、冷暖房効率が向上→光熱費削減
- 既存の折板屋根の上に重ねて施工するため、リフォームにも対応可能
屋根の遮熱塗装
高反射率塗料による熱吸収抑制
屋根表面に遮熱塗料を施工することで、太陽光の反射率を向上させます
この工法の特徴:
- 比較的安価に施工が可能
- 効果を維持する為、定期的な塗り直しが必要
- 明るい色の塗料で塗装するとより効果が高い(シルバー系やブラック系よりもホワイト系塗料の方が効果高い)
屋根上にスプリンクラーの設置
屋根上にスプリンクラー(散水機)を設置し屋根に水を撒くことで冷却させる方法です。
この工法の特徴:
- 様々な散水システムがある
- 水道代が掛かる。(ランニングコストがかかる)
- 長時間屋根に水を撒き続ける為、屋根が錆びやすい→メンテナンスがかかる
空調設備・換気設備の増設・改善(自然換気と機械換気の組合せ)
工場内の熱気を換気しないといつまでも暑い状態が続いてしまいます。効果的な換気システムの構築し、熱気の排出されることも重要です。主には方法があります。
- 空調機の入替・増設:冷房効果アップ
- ベンチレーター増設:屋根頂部での自然換気
- ルーフファン設置:機械式強制換気
- 側面換気窓の設置:横方向の通風確保
併せて、スポットクーラーを配置する事で限定的な作業エリアで対応することが可能です。
なお、機械設備等増設したり、間仕切りを増やすことで機械熱による上昇や風の流れなどが変わり、換気がうまくできていない可能性もあります。工場の状況に合わせ、検討されると良いでしょう。
開口部からの熱の侵入を防ぐ
開口部から熱風が入ってきてしまうことも暑くなる原因です。
窓は断熱性能のよいものにしたり、侵入口はシートシャッターやビニールカーテンを設けたりすることでできるだけ、外から熱が入らないようにすることも重要です。
侵入口には前室を設けるとさらに良いでしょう。
まとめ
工場の暑さ対策は、2025年6月の法規制強化により、任意の取り組みではありません。従業員の健康と安全を守り、企業の持続的成長を実現するための必須投資です。
初期投資は必要ですが、冷房費削減、生産性向上、労災リスクの軽減が期待できます。
まずは工場の現状を把握いただき、専門業者に相談の上、暑さ対策を計画してみましょう。
熱中症対策等の支援事業もありますので、ぜひご検討下さい。
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