建設コラムColumn
半導体の製造は、人間の目には見えない細微なレベルでの精密さが求められます。そのため、半導体工場には、製造する半導体に不良品がでないよう、異物混入を防ぐクリーンルームが不可欠です。この記事では半導体工場にクリーンルームが必要な理由を改めて解説するとともに、クリーンルームの等級や規格、クリーンルーム設計のポイント、建設コスト運用コストの目安についてわかりやすく解説しています。
目次
半導体工場にクリーンルームが必要な理由

半導体製造では、空気中の微粒子や静電気が製品不良の大きな要因となるため、ナノレベルの微細加工が必要です。クリーンルームは高度な換気システムにより清浄な空気を供給し、異物混入リスクを最小化する設備であり、安定した高品質製造を実現し続けるために欠かせない基盤インフラです。
微細加工と異物リスク
半導体の微細加工では、髪の毛や埃はもちろん、0.1μm以下の微粒子さえ不良品発生の要因です。さらに作業員の衣服や呼気も汚染源となるため、クリーンルームでは厳格な入退室ルールが設けられ、異物混入リスクを徹底的に抑制しています。
また、半導体製造ではエッチング剤や洗浄液などの化学薬品に加え、化学薬品やフォトレジスト(感光性樹脂)を塗布・露光して回路を形成する工程があります。これらの材料は微量の揮発成分を放出することがあり、回路形成に影響を与える分子レベルの汚染(AMC:Airborne Molecular Contamination)に対する対策も重要です。
そのため、粉塵対策にとどまらず、大気汚染を引き起こす一酸化炭素、窒素酸化物などのガス状汚染物質の適切な管理も必要といえます。
品質確保と歩留まり向上
「歩留まり」とは、投入した原材料や部品に対し、最終的に良品として出荷できる割合を示す重要な指標です。歩留まり率を数%高めるだけで大幅なコスト削減に直結します。クリーンルームは、大きな設備投資でありながら、長期的には収益改善を支える基盤となります。
たとえば、歩留まりが90%から92%に改善すると、年間数億円規模のコスト削減につながるケースも珍しくありません。これは、半導体製造が極めて高付加価値な産業であることを示しています。クリーンルームへの投資は、単なるコストではなく「利益を生む仕組み」そのものであるといえるでしょう。
クリーンルームの等級と規格
クリーンルームは空気中の微粒子数で等級が定められており、半導体分野での基準は「ISO14644」規格です。そのため、清浄度は空調設備だけでなく、壁・床・天井の建材や気密性、施工精度にも大きく左右され、建築と設備の一体的な計画が不可欠です。クリーンルームについては以下の記事でも解説しています。
ISO14644の清浄度クラス
「ISO14644」とは、空気中の粒子数を基準に清浄度を定める国際規格です。半導体分野では主にクラス5(旧クラス100/アメリカの「連邦規格」[Fed. Std. 209E])からクラス7が利用されており、クラス数値が小さいほど厳格な環境が求められ、建設や維持にかかるコストも増大します。そのため、必要な製造精度に応じた適切なクラス選定が重要となります。
国内外での規格と運用基準
国内外でのクリーンルーム規格は国際的な統一が進んでおり、日本工業規格(JIS B9920)もISOに準拠しています。輸出入に関わる製品では海外基準への適合が不可欠であり、工場設計時にはどの規格を基準とするかを明確に定めることが、品質確保と国際競争力維持のために重要です。
クリーンルーム設計のポイント

クリーンルームの設計では、気流や空調、レイアウト、静電気対策など、多面的な検討が不可欠です。初期計画の精度が運用効率や維持費に直結し、さらに素材選びの適否が清浄度維持と長期的な安定運用を左右します。
気流方式と空調システム
クリーンルームの気流方式には大きく「層流方式」と「乱流方式」があります。層流方式は、天井から床へ均一に空気を流すことで粒子を効率的に排出する仕組みで、高い清浄度を確保しやすいのが特徴です。
一方、乱流方式は室内全体に空気を循環させる仕組みのため、導入コストは低いものの、粒子が残存しやすいという課題があります。半導体工場のようにナノレベルの精度が求められる分野では、安定した環境を維持できる層流方式が主に採用されています。
レイアウトと人・物の動線
クリーンルームでは汚染防止のため、人と物の動線を明確に分離することが基本です。作業員は更衣室で専用服に着替え、エアシャワーを経て作業区域に入室する段階的プロセスが徹底されます。一方、物資搬入も専用ルートを設け、作業員の動線と交差しないよう計画されます。これにより異物混入リスクを最小化し、安定した清浄環境を維持することが可能となります。
防振・防塵・静電気対策
半導体工場では微細加工装置が振動に極めて敏感なため、防振構造の採用が欠かせません。また、粉塵の発生を抑える床材や壁材を選定し、清掃性と耐久性を確保することも重要です。さらに静電気は微粒子付着や装置故障の原因となるため、静電気防止床やアース設備を設置し、安定した製造環境を維持しなければなりません。
建設コストと運用コストの目安
半導体工場におけるクリーンルームは、一般的な工場に比べて建設コストが格段に高く、初期投資が数十億円規模に達することも珍しくありません。これは高い清浄度を維持するための特殊な建材や気密構造、さらに大規模な空調・フィルタ設備が必要となるためです。
しかし、建設後の運用段階でも負担は続きます。特に、空調と電力は膨大なエネルギーを消費し、維持費の大きな割合を占める設備です。清浄度を安定的に保つためには24時間稼働が前提となるため、電力コストは無視できません。
その一方、近年は省エネ型空調システムやインバータ制御、熱回収技術の導入が進み、ランニングコスト削減の工夫が積極的に行われています。また、モジュール化設計を採用すれば、必要なエリアだけを稼働させる柔軟な運用が可能となるため、エネルギー効率の向上とコスト最適化に寄与しているといえるでしょう。
このように、クリーンルームは高額な初期投資を要するものの、設計段階から省エネや拡張性を意識すれば、長期的には運用コスト抑制が可能になり、安定した収益基盤を築けます。
ヤマウラが提供できるソリューション
ヤマウラは地域に根ざした総合建設業として、半導体工場やクリーンルームの豊富な実績を有し、設計から施工、さらに運用まで一貫対応できる体制を強みとしています。
半導体工場建設の実績とノウハウ
ヤマウラは半導体工場建設において豊富な実績を有し、特にクリーンルームの設計・施工で多数の経験を積み重ねてきました。ISO規格に基づいた高精度な設計を実現し、微細加工に不可欠な清浄度を安定的に確保できる点が強みです。設計から施工、運用まで一貫して対応できる体制により、顧客のニーズに即した最適なソリューションを提供し、信頼性の高い生産環境づくりを支えています。
将来を見据えた提案力
ヤマウラは豊富な実績をもとに、生産能力の増強や新技術導入に対応できる拡張性を考慮し、将来の用途変更にも柔軟に対応可能な構造計画を提案します。長期運用を前提にメンテナンス性を高めた設計により、安定した生産体制と持続的な競争力強化を支えます。
まとめ
半導体工場において、クリーンルームは品質を左右する重要な設備です。設計・施工には高度な知識と経験が求められます。ヤマウラは、法規対応から拡張計画まで含めたトータル提案で、安全・効率的な工場建設をサポートします。
長野県・山梨県で半導体工場建設はヤマウラへ
ヤマウラでは豊富な実績と最新技術を活用し汚染源となる人の動線を適切に計画してクリーンルームをご提案します。安全かつ長期的に活用できる工場づくりをサポートしていますので、ぜひ一度ご相談ください。
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