建設コラムColumn
工場や倉庫の空間設計でよく選ばれる無柱空間。柱がないことで広々としたスペースが確保でき、視界を遮られずに作業効率やレイアウトの自由度を大幅に上げられます。フォークリフトの運搬作業もスムーズになるため、安全性や作業効率アップにも。本記事では、無柱空間のメリットや大スパン構造の基本技術について詳しく解説します。無柱空間の導入を検討している方が知っておくべきポイントをわかりやすくお伝えするので、参考にしてみてください。
無柱空間とは
無柱空間について、以下の順番で説明します。
- 大スパン構造の基本
- 鉄骨系の無柱空間を支える主要な工法
- 木造の大スパン構造
順番に見ていきましょう。
大スパン構造の基本
大スパン構造とは、建物内部に柱を設けずに柱と柱の間隔(スパン)を広く取ることで無柱空間を可能にする建築技術です。
スパンが長くなると梁(はり)の断面が大きくなり、垂直荷重に耐えるために梁成(はりせい)を確保する必要が生じます。スパンが長いほど梁を支える柱の断面も増やす必要があり、階高が高い場合は柱の座屈を防ぐために断面強化も不可欠です。
無柱空間の設計では、スパンの長さや梁成、階高の調整を行うことで視界や動線が遮られない広々とした空間を作り出せます。大スパン構造は、主に体育館・倉庫・イベントホールなど、広いスペースが求められる建物で多く採用されています。
鉄骨系の無柱空間を支える主要な工法
無柱空間を支える大スパン構造は、次のような鉄骨系の工法が一般的です。
構造 |
説明 |
導入例 |
トラス構造 |
・三角形に組み合わせた部材を用いることで、軽量かつ高強度を実現する工法 ・広いスパンを支えるのに適している |
大規模倉庫 |
アーチ構造 |
・部材をアーチ状に配置し、荷重を分散して広い空間を支える工法 ・構造上の安定性とデザイン性を兼ね備えている |
体育館やドーム型建築物 |
吊構造 |
・ワイヤーやケーブルで屋根を吊り下げてスパンを支える工法 ・広いスペースに対応する場合に多く採用されている |
大規模なスタジアム |
これらの工法は、無柱空間に必要な広さと強度を確保するために欠かせない技術です。
木造の大スパン構造
従来、木造での大スパン構造は難しいと考えられていました。木材は他の建築素材に比べて柔軟性が高く、スパンを広げると重さや負荷によって大きくたわみやすくなるからです。引張力や圧縮力への耐性も鉄骨やコンクリートに劣るため、木造での大スパンは長い間実現しませんでした。
しかし、CLT(クロス・ラミネイティッド・ティンバー)や大断面集成材の開発により、木造でも大スパンの無柱空間が可能になりつつあります。それでも主流は鉄骨造であり、軽量で高強度な鉄骨が無柱空間に多く採用されています。
無柱空間にするメリット
無柱空間にするメリットは、主に以下の3つです。
- 視界を遮らない広い空間を確保できる
- レイアウトや動線の自由度が高い
- 大型設備や商品の設置が容易
それぞれ詳しく説明します。
視界を遮らない広い空間を確保できる
無柱空間の最大の利点は、広い視界が確保されることで作業のしやすさと安全性がアップする点です。
工場や倉庫内に柱がないことで倉庫全体を見渡しやすく、在庫や機械の位置をすぐに確認でき、効率的に作業を進められます。フォークリフトなどの運搬機材の衝突リスクも減るため、倉庫内での安全性もアップ。
広い空間を見渡せることで作業効率が改善され、作業者の動きがスムーズになり、作業時間の短縮につながります。
レイアウトや動線の自由度が高い
柱がない無柱空間では、工場や倉庫のレイアウトを自由に設計できます。機械や棚の配置を最適化すれば、作業効率を一層高められます。
さらに、作業動線を効率的に設計することで作業者の移動距離を短縮でき、作業時間の削減にも。将来的なレイアウト変更や機械の増設にも対応しやすく、事業の拡大や環境の変化にも柔軟に対応できる点が魅力です。
大型設備や商品の設置が容易
無柱空間にすると広いスペースを確保できるため、大型機械の導入や大きなパレット・商品を容易に収納できる点も大きなメリットです。柱がないことでフォークリフトやクレーンの移動がスムーズに行えるため、効率的に積み下ろし作業を行えます。
また柱の制約がないため、大きな製品や設備を扱う場合でも取り扱いやすい特徴が。無柱空間を有効活用することで、作業時間の短縮や業務全体の効率化につながります。
無柱空間についてよくある質問
最後に、無柱空間についてよくある質問に順番にお答えします。
- RC造の無柱空間はどのくらいですか?
- 無柱空間の最大スパンは何メートル?
- 大スパン構造の実例は?
1つずつ見ていきましょう。
RC造の無柱空間はどのくらいですか?
RC造(鉄筋コンクリート造)による無柱空間は、一般的に10m程度のスパンが上限とされています。鉄筋コンクリートの特性上、スパンを長くすると梁や柱に強度を持たせることが難しくなるためです。
オフィスを作る際に求められるような16m〜20mといった広いスパンが必要な場合には、鉄骨と鉄筋コンクリートを組み合わせたSRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)が適しています。SRC造を用いることで強度を確保しつつ柱のない広々とした空間を作り出すことができ、よりフレキシブルな空間設計が可能になります。
無柱空間の最大スパンは何メートル?
ヤマウラの技術によって、最大60mもの無柱大空間を実現できるようになりました。現在、日本国内ではこの長さが最大スパンです。
このような大スパン構造は、主に工場・倉庫・スタジアムといった大規模施設に活用されています。60mものスパンを柱なしで支えられることにより、大規模なイベントや製造ラインに必要な広い空間が確保でき、柱の位置に気を取られずに自由に広々と空間を使えます。
大スパン構造の実例は?
大スパン構造の実例としては、自動車整備工場で木造の2×4トラス工法を採用し、間口13.5m×奥行き10.5mの無柱空間を作った例があります。この設計で、基礎を含めた工期の短縮と大幅なコスト削減を達成できました。
また、軒高6m以上でスパン23.6mの無柱空間を備えた建物や、千葉県で進行中の木造大スパン店舗の計画(間口10m×奥行き15m)もあります。
大スパン構造の無柱空間があれば、工場なら製造ラインを簡単に変更できたり、体育館なら広々としたアリーナスペースを確保できたりします。
まとめ
今回は、無柱空間の基本的な特徴やメリット、実現するための構造について詳しく解説しました。無柱空間で柱のない広々とした空間を確保できることで、視界を遮らずに作業効率やレイアウトの自由度を高められる点が大きな魅力です。工場・倉庫・オフィス・大規模なスタジアムなど、さまざまな施設で無柱空間は活用されています。
長野や山梨エリアで無柱空間の導入を検討される際は、ヤマウラにご相談ください。ヤマウラの技術を活用すれば、最大60mの無柱大空間を実現できます。これだけ広大な空間があれば、あらゆる施設において理想的なレイアウトや作業環境を作れるでしょう。ぜひ、無柱空間の可能性を広げるヤマウラの技術力をご活用ください。