建設コラムColumn
EC市場の拡大や消費者ニーズの多様化を背景に、物流倉庫には今後も多くの需要があるといわれています。本記事では、物流倉庫建築を検討されている事業者の皆様に向けて、計画から完成まで押さえておくべき重要なポイントをご説明いたします。
目次
建てる前に知っておきたい物流倉庫の概要
物流倉庫を建てるうえでの大前提となる概要について、改めて確認しておきましょう。
建物として見た物流倉庫は以下のような建物です。
物流の拠点としての機能
物流倉庫は倉庫といっても単に「物の保管」をするのでなく、商品の管理や様々な配送先への効率的な配送を担う「物流の拠点」となる施設です。似た意味で「物流センター」という言葉があります。厳密な違いがあるわけではありませんが、保管より仕分けや配送に重点を置く場合、「倉庫」というよりは「センター」という呼び方がふさわしくなるでしょう。
物流倉庫はトラックやコンテナからの荷受け・検品から、仕分けや格納、逆に必要なものを取り出すピッキング、必要に応じて商品の包装やラベル貼り付けや検査を行い、配送までの準備を整えるなど、様々な工程の業務を行う場所になる可能性があります。
荷物の保管を目的とした倉庫は一般的に「非居室」として扱われますが、事務所や作業室が併設されている場合や継続的に人が滞在する利用実態の場合、「居室」とみなされます。「非居室」は建築基準法上の換気要件等がありませんが、人が継続的に活動する「居室」には換気設備や一定の採光が必要となります。作業を行う場所は単なる「倉庫」とは別の機能確保が必須になるという点は、ぜひ念頭に置いておきましょう。
もちろん、商品の品質を維持するため適切な温度・湿度管理を行い、効率的な配置で在庫の正確な把握を行うなど、保管施設としての機能もしっかりと確保しなければなりません。
物流倉庫建築の構造
物流倉庫で最も用いられるのは鉄の骨組みを用いる「鉄骨造」(S造)です。多くは6mm以上の太い鉄骨を用いる重量鉄骨で、大きな空間をとれる点が特徴です。大型化・高機能化する物流倉庫において、高い階層でも柔軟に対応できる点が採用の理由となります。
低層の物流倉庫では、重量鉄骨造を規格化した「システム建築」もよく用いられます。規格化することにより、シンプルなデザインであれば高品質の建物を安いコストで造ることができます。建築規模が非常に大きい場合等、ニーズによっては鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造やプレキャストコンクリート(PC)造がとられることもあります。
物流倉庫の建築費用の目安
物流倉庫の建築費用について、ごく大まかな目安として最近の統計からご紹介しますと、鉄骨造の倉庫の平均価格は2024年で59.2万円でした。(eStat 建築物着工統計 2024年より)
物流倉庫の場合、実際の価格は規模や自動化等の設備導入により大きく変動しますが、現在、建設費の上昇が激しい点については特筆すべき点としてお知らせしておきます。
検索等で参照した情報が少し古いと、実際の見積額との違いに驚いてしまうことがあるかもしれません。できるだけ新しい情報を確認されるとよいでしょう。
物流倉庫建設プロジェクトの計画ステップ
物流倉庫建築の計画を進めるステップについては、以下のようなものがあります。それぞれ御社の場合に当てはめて、具体的な進め方をイメージしてみてください。

立地選定の基準
物流倉庫の建築にあたって、特に重要となるのが立地選定です。以下のような点から総合的に判断します。
・交通アクセス
・法規制
・土地条件
・周辺環境
・価格
中でも、交通アクセスは物流倉庫の経営成功の鍵となる要素です。生産拠点や高速道路のインターチェンジ等からの距離を始め、必要な各拠点への接続性を入念にチェックが必要となります。
想定される主要ルートで、大型トラックの通行が可能な道路幅員があるか、渋滞の影響があるか等、道路状況も併せて確認しておきましょう。
法的な要件についても、そこに建てられるかどうかから、具体的に建築物の内容や大きさ・機能など、経営の根本的な部分に関わってきます。様々な作業をする物流倉庫は、建築基準法上の建物の用途が「倉庫」でなく「工場」となる可能性があり、これにより、建てられる用途地域などが変わってくる点などは注意が必要です。法律や土地条件の判定には建築の知識も必要な点が多くありますので、専門家に相談のうえ進められるとよいでしょう。土地の決定前に設計・建築会社を決めて相談するのもよい手段です。
更に、労働力を確保できること、近隣トラブルが発生しにくいことに加え、将来の開発計画の有無なども含め、周辺環境についてもチェックしておいてください。
設計・建築会社の選び方
規模や内容にもよりますが、内部で様々な設備を必要とする物流倉庫は、比較的難易度が高い建築となります。コストと合わせて、実績や技術力、提案力等をしっかり吟味し、プロジェクトのパートナーを決定してください。
まずはWEBサイトで類似規模・用途の物流倉庫建築経験があるか等チェックしておきましょう。特に冷蔵や自動倉庫など特殊なニーズがある場合は、専門的な実績の有無が判断基準になります。技術力の評価は難しいものですが、建築士や施工管理技士等、資格者の数は指標の一つとなります。記載されている中に物流系の資格があるかどうかなども参考になるでしょう。声をかける会社を絞ったら、やりとりを進める中で提案力等を見極めていきます。
なお、建築にあたって工事期間はもちろん、建物の完成後もメンテナンス等で施工会社とは関係が続くこととなります。財務内容なども確認し、安心して長期で付き合える会社を選んでください。
基本計画でニーズ分析とコンセプトをクリアに
土地、設計の会社が決まると、建物の基本計画を進めることができます。
具体的なニーズを詳細に分析のうえ、どのようなコンセプトの建物を作るか、設計者と共同で進めていく作業となります。
現状分析では、取扱商品の種類・特性、物流量、作業内容等を詳細に把握します。併せて、将来の展開として、今後事業の拡大計画や商品構成の変化の見込みなども含めて、目標とすべき数値や、建築の目的とすべき内容をまとめます。
これらをもとに建物の必要な保管能力や、行われるべき作業工程を具体的に設定し、機能要件定義としていきます。要望についてはできるだけ優先順位をつけておくと、その後の金額調整の際に役立つでしょう。
設計はシミュレーションを大切に
まとまった基本計画の内容を基に、基本設計・実施設計に入っていきます。
特に、発注者にとって主要な内容はほとんどが基本設計で決まります。社内の必要なメンバーに情報が行き届き、充分な合意形成が図れる体制で取り組んでください。
設備の要となる動線計画・ゾーニングなどは、シミュレーション等を行いながら最適化を図っていきましょう。交差や逆流を抑え、人・商品・運搬機器等の流れを可能な限りシンプルにすること、各ゾーン間の効率的な連携づくりなどが目標になります。現在ではBIMやシミュレーションソフトといったITツールを駆使することで、発注側でも現実に近いイメージを確認し、安心して工程を進めることができるようになっています。
プロジェクト管理と進捗確認
実施設計・建築と、設計・施工業者中心の作業になっていきますが、影響する要素の多い大規模な工事では、工期中も発注者との確認や相談が必要なことがしばしば起こります。
報告の確認や定例会への参加を始め、密に連絡を取り合い、最後までしっかりとコミュニケーションを欠かさない意識がプロジェクトの成功の鍵となるでしょう。
完成後は自動倉庫システムや温度管理設備の運用など、物流倉庫の運用に直結する重要設備の試運転の期間の確保が必要となります。運用開始まで、余裕をもったスケジュールを設定してください。
計画のチェックポイント
物流倉庫建築の際に、ぜひ力を入れた検討をお勧めしたいポイントとしては、以下のようなものがあります。参考にしてみてください。

自動化設備・ICT
ご存じの通り、現代の物流倉庫では、自動化設備とICTシステムの導入が競争力確保の重要な要素となります。
自動倉庫システム(AS/RS)、搬送システム、仕分けシステム、ピッキング支援システムなど、様々な自動化を実現するハードの仕組みと合わせ、倉庫管理システム(WMS)や輸送管理システム(TMS)などのソフトウェアが登場しています。
今後の労働力不足が予測される中、導入を検討したい魅力的な技術が続々と登場しており、時間をかけて確認したいものも出てくるでしょう。
特に建物内で物理的に動作するシステムについては、設計前に具体的要件がクリアになるよう、しっかりとスケジュール調整のうえ選定を進めてください。
エネルギー設備の検討
物流倉庫の建築の際、ぜひ忘れずに検討していただきたいのが省エネルギー・創エネルギー対策です。
最も検討しやすく効果が大きいものとして、太陽光発電システムの導入があります。屋根面積が広い物流倉庫は太陽光発電に適しており、短い期間での投資回収も期待できます。併せて蓄電システムなどを導入することにより、夜間の電力消費をまかなったり、災害時のBCP対策として有効活用が可能になります。
エネルギー分野に関しては使える補助金なども比較的多くあります。投資のための情報開示の指標としても使われていますから、導入のチャンスを逃さない心構えを持っておきましょう。
人材確保のために
物流の拠点である物流倉庫は、人が働く場所であるということもぜひ念頭に置いておきたい事実です。ただでさえ人口減少トレンドに入る今後を見据え、働き手の確保は大きな経営課題です。
二度とない新築の機会あたって、ぜひ働きやすい環境整備という面でも協議してください。
暑さ・寒さをできるだけ防ぎ、安全に配慮するといった基本的な環境に加え、倉庫・工場でも選ばれる職場として、積極的に福利厚生施設に力を入れる事例が増えています。
使いやすくきれいな更衣室や衛生施設、コミュニケーションが進む居心地のよい食堂や休憩室など、求人パンフレットに大きく使えそうな空間づくりを検討してみてはいかがでしょうか。
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