建設コラムColumn
近年、日本の夏は記録的な猛暑となることが多く、工場内の温度が40℃を超えるケースも珍しくありません。このような過酷な環境は、従業員の健康や命を脅かすだけでなく、作業効率の低下や企業としての生産性にも悪影響を与えます。建設業界の専門家として、効果的な工場の暑さ対策について詳しく解説いたします。
目次
工場内が暑くなる主な原因とは

なぜ、工場内が暑くなってしまうのでしょうか、その主な原因を考えてみましょう。
工場内の温度上昇には、大きく分けて「構造的要因」と「運用的要因」の2つがあります。
それぞれの要因について、具体的にご紹介いたします。
温度上昇の構造的要因(建物・設備)
建物・設備など構造の面からの要因が大きいです。下記の要因を改善することが、効果的暑さ対策に繋がります。
- 折板屋根や波型スレートなど熱伝導率の高い金属性屋根からの直射日光による熱侵入
- 遮熱・断熱材の未設置、低性能または経年劣化による性能低下
- 換気能力の不足(換気システムの欠如により熱気が工場内に滞留している状況)
温度上昇の運用的要因(機械設備や作業環境)
工場内で稼働する機械設備や日々の作業環境など運用面の要因は下記になります。
- 溶接機や乾燥炉など、稼働する機械設備からの膨大な排熱
- 旧式の照明設備(水銀灯や蛍光灯など)からの発熱
- 狭いスペースに作業員や機械が密集することによる熱溜まり(作業密度の高さ)
建設工事による具体的な工場の暑さ対策

前述の要因を踏まえ、工場・設備改修のアプローチから実現できる具体的な暑さ対策をご紹介します。
屋根断熱改修
インシュレーション工法(カバー工法)の導入
既存の屋根上にグラスウール等の断熱材を敷き詰め、その上から新しい折板屋根を被せる方法です。
屋根からの熱侵入は工場全体の温度上昇に最も大きな影響を与えるため、断熱改修は非常に高い効果を発揮します。
この工法の特徴:
- 二重葺き構造と断熱材の充填により、優れた断熱性と防音性を実現
- 外部からの熱の出入りを遮断し、冷暖房効率が向上→光熱費削減
- 既存の折板屋根を撤去せずに施工できるため、工場の操業を止めずに施工が可能。(リフォームにも対応可能)
屋根の遮熱塗装
高反射率塗料による熱吸収抑制
屋根の表面に遮熱塗料を施工することで、太陽光の反射率を向上させます
この工法の特徴:
- 比較的安価に施工が可能
- 断熱効果は見込めない
- 効果を維持するためには、定期的な塗り直しが必要
- 明るい色の塗料で塗装するとより効果が高い
シルバー系やブラック系よりもホワイト系塗料の方が効果高い
空調設備・換気設備の増設・改善(自然換気と機械換気の組合せ)
工場内の熱気を換気しないといつまでも暑い状態が続いてしまいます。熱気を滞留させない為に効果的な換気システムの構築し、熱気を排出されることが重要です。主には下記の方法があります。
- 空調機の入替・増設:冷房効果アップ
- ベンチレーター増設:屋根頂部での自然換気
- ルーフファン設置:機械式強制換気
- 側面換気窓の設置:横方向の通風確保
- 大型シーリングファン設置:空調・換気効率の向上、体感温度を下げる効果が期待される
なお、ピンポイントで冷やす「スポットクーラー」を配置することも限定的な作業エリアで対応することも可能ですが、機械設備等増設したり、間仕切りを増やすと機械熱による上昇や風の流れなど変わり、換気がうまくできていない可能性もあります。工場の状況に合わせ、検討されると良いでしょう。
開口部からの熱の侵入を防ぐ
窓や出入口などの開口部から流れ込む熱風も、室温上昇の大きな原因です。場所に応じた適切な対策を行いましょう。
窓・サッシ部:断熱性能の良いものに入替える。シングルガラスから(Low-E)複層ガラスにするなど。
遮熱断熱フィルムを張る。遮熱カーテン・ブラインド等の設置。
出入り口部 :シートシャッターやビニールカーテンを設け、外から熱ができるだけ入らないようにすること。
出入り口には前室(風除室)を設けるとさらに効果あり。
2025年6月施行の法規制強化への対応

これまで具体的な対策を解説してきましたが、工場における暑さ対策(熱中症対策)をさらに加速させる法改正が2025年6月に行われました。ここでは法改正の内容と企業に求められる対応をご案内いたします。
労働安全衛生規則改正の背景
近年の深刻な気候変動により、夏場の猛暑が常態化し、職場での熱中症による労働災害が増加しています。厚生労働省の調査によると、2025年の熱中症による休業4日以上の死傷災害者数は1,803人と、前年(1,195人)から大幅に増加し、調査開始以来最多を記録しました。
一方、2024年まで30人を超えていた死亡災害者数は、2025年には19人へと減少。厚生労働省は「本改正・施行により、死亡災害の防止において一定程度の効果が図られた」としており、企業側の義務化対策の重要性が改めて浮き彫りになっています。
労働安全衛生規則改正による義務化
2025年6月1日、労働安全衛生規則の改正施行により、事業者に対して熱中症対策が法的義務となりました。暑さ指数(WBGT値)が28℃以上、または気温31℃以上の環境で連続1時間以上、または1日4時間を超える作業を行う場合、以下の措置が義務付けられています。
- 熱中症患者や患者を見つけた者が報告するための体制整備・周知
- 緊急連絡網、熱中症の重篤化防止するための措置の実施手順の作成・周知
違反した場合は罰則もある
規則に違反した場合、罰則が科される可能性があります。6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。これは単なるガイドラインではなく、法的拘束力を持つ義務であることを認識する必要があります。
なお、会社としては大切な従業員の安全、快適な職場環境を守る意味でも暑さ対策をすることはとても重要です。まずは職場環境を確認してみましょう。
まとめ

工場の暑さ対策は、2025年6月の法規制強化により、任意の取り組みではありません。従業員の健康と安全を守り、企業の持続的成長を実現するための必須投資です。
初期投資は必要ですが、冷房費削減、生産性向上、労災リスクの軽減が期待できます。
まずは工場の現状を把握いただき、専門業者に相談の上、暑さ対策を計画してみましょう。
熱中症対策等の支援事業もありますので、ぜひご検討下さい。
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