建設コラムColumn
食品工場を建てることは、ただの“建物づくり”ではありません。衛生管理・動線設計・温度や湿度のコントロール、さらには法規制や立地条件まで、検討すべき要素は多岐にわたります。
この記事では、食品工場を新設・改築する際に見落としがちな5つの重要なポイントに絞って、現場目線でわかりやすく解説します。後悔しない食品工場づくりの第一歩として、ぜひ参考にしてください。
なお、食品工場以外の工場建設に関する基礎知識は、以下の記事を参考にしてみてください。
関連記事:工場を建てるための基礎知識|失敗しないためのポイントを解説
目次
食品工場を建設する際の5つの注意点
まず、食品工場を建設する際には次の5つをよく考えておきましょう。
- 環境・立地
- ゾーニング
- 入退場対策
- 温湿度
- 建材・設備
環境・立地
立地選びは食品工場の品質と安全性を左右する重大要素です。「用途地域」が工場建設に対応しているか確認し、加えて周辺環境も慎重に見極めましょう。用途地域が工業系の「工業専用地域」「工業地域」「準工業地域」は食品工場の建設は可能ですが、住居系や商業系の用途地域は小規模であれば建設可能な場合もありますが、全般的に建設を制限しています。
また、畜産施設や農地が近いと害虫や異物混入のリスクが高まります。立地選びは、周辺環境を十分確認して将来のリスク排除をして進めましょう。逆に臭気や振動、騒音がでてしまう工場の場合には近隣施設から苦情が発生する恐れがありますので注意しましょう。
また、上下水道の容量、災害リスク(浸水、地震)も事前チェックが必須です。物流動線と従業員の通勤アクセスも見逃せません。「土地が安い」だけで選ぶと、後で大きな代償を払うことになります。
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ゾーニング
ゾーニングとは、工場内を汚染リスクに応じて区域分けし、交差汚染を防ぐ設計手法です。食品工場では「汚染区域」「準清潔区域」「清潔区域」といった分類が一般的です。直接外部環境と接する「汚染区域」で原材料を受け入れ、「準清潔区域」で食材の下処理や加熱処理を行い、「清潔区域」で最終の製品加工・充填・包装をします。動線も重要で、人・物・空気が交差しないレイアウトにすることで、衛生事故や異物混入のリスクを大幅に下げることが可能です。
ゾーニングは、後述するHACCPに基づく食品工場を計画するうえでも大変重要なもので、最初の設計段階での徹底が求められます。
入退場対策
作業員の入退場は衛生管理上、非常に重要なポイントです。外部から清潔区域に直接出入りさせないよう、エアシャワー・手洗い・異物除去設備の設置が不可欠です。
入退場のルールづくりと動線設計を怠ると、せっかくの衛生設計が無意味になってしまいます。現場での実行性も考慮し、運用しやすい仕組みにすることが大切です。
温湿度
工場内の温度管理は、食品の品質と作業環境の両面で欠かせません。ちなみに、厚生労働省の「大量調理施設衛生管理マニュアル」では調理場は温度25℃以下、湿度80%以下に保つことが望ましいとされています。ただし、実際の管理基準は扱う食品の特性によって異なり、乳製品や生鮮食品などではより低温の環境が求められます。
設備的には空調機・冷蔵冷凍システム・断熱材などを適切に選定し、区域ごとの制御もポイントです。温度のばらつきは、クレームや廃棄コストの原因にもなりかねないため、作業室内が均一な温湿度となるよう、気流などにも注意しましょう。
建材・設備
食品工場では、建材や設備にも衛生性と清掃性が求められます。床や壁は防水性・耐薬品性があり、継ぎ目の少ないノンジョイントタイプが理想的です。排水設備やドレン周りは、汚れが溜まりにくく掃除しやすい設計が重要です。ステンレス製の棚・ライン機器も清掃性に優れ、カビや錆のリスクを下げられます。
建材の選定ミスは衛生トラブルや保健所指導の原因になるため、食品工場建設の実績がある業者を選びましょう。
また、HACCPに基づく食品衛生を行うため、作業者の入退室及び工程等の衛生管理を行う管理・監視システムを導入する事がおすすめです。
食品工場の建設にはマスト!HACCPとは
HACCPは、食品の製造・加工・流通における危険要因を特定し、それを管理することで食品の安全性を確保するシステムで「Hazard Analysis and Critical Control Points」の略です。
「危害要因分析(HA)と重要管理点(CCP)」を組み合わせた言葉です。
食品衛生法の改正により、2021年6月から日本でも完全義務化されました。これにより、すべての食品事業者がHACCPに基づいた管理を行うことが求められるように。国際食品衛生基準に沿った食品の品質管理が行われ、消費者に安全な製品を提供するための取り組みが強化されています。
HACCPの重要性
HACCPは、食品に関連するリスクを最小限に抑えるための有効な手段です。
従来の製品検査は出荷状態の製品の抜き取り検査で行われ、問題発生後の対応に重点を置いていました。そのため、製品不良がどの時点で発生したか捉えにくい状態でした。
一方、HACCPは予防的アプローチです。問題が発生する前に管理することで、食品の安全性を高められます。消費者からの信頼を得るうえでHACCPの導入は必須で、適切にHACCPに基づく管理運営を行うことでトラブルの発生率を大きく減らす効果が期待できます。
HACCPを導入しなかったらどうなる?
HACCPの義務化による罰則は「各都道府県の定める条例に違反した場合の罰則」と「食品衛生法に違反した場合の罰則」の2種類です。地方自治体の条例により、違反した場合には2年以内の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。食品衛生法に違反すると判断された場合は、最大で3年以下の懲役や300万円以下の罰金(法人の場合は最大1億円以下)です。
HACCPを導入しないと食品事故を起こすリスクが高まると考えられます。大きな食品事故に繋がった場合、営業停止処分や重要な取引先との契約喪失など、ビジネスに深刻な影響を及ぼす可能性も。輸出企業の場合、HACCP基準を重視する国への輸出が制限されるリスクもあります。
HACCPに関して詳しく知りたい方は、次の記事も目を通してみてください。
関連記事:HACCPに対応するために知っておくべき7原則12手順とは?
食品工場の建設費用
食品工場建設を計画するなかで、建設コストがどの程度であるか概算金額の求めますが、計画初期の段階では一概に金額を算出するのは困難です。なぜなら、衛生レベルの設定、冷凍冷蔵設備の有無、物流保管計画など変動要因が多すぎるからです。
食品工場を稼働させるには、建設費の他にも様々な費用が掛かります。参考までに、項目をご紹介します。
【イニシャルコスト】
- 土地の取得/賃貸費用
- 建物自体の建設費
- 空調や給排水など機械設備費
- 動力や照明など電気設備費
- 敷地や外構の整備費
【ランニングコスト】
- 作業機械などのエンジニアリング費
- 清掃や定期メンテナンスの予算
- 保管や物流費用
- 水道光熱費
- 人件費
長期的な目線で予算を見積もっておくことで、急な修繕対応にも慌てずに済みます。
まとめ
今回は、食品工場を建設する上で知っておきたい基礎知識をまとめてみました。他の工場とは違い、食品工場は衛生面で事故を起こさないよう、気をつけるべきポイントがたくさんあります。安心・安全に使える工場を建設するためにも、業者を選ぶ際には食品工場を建設した経験があるかが重要な指標になってきます。
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