2025.10.22
南海トラフ地震に備えるBCP対策の必要性

皆様はBCP(事業継続計画)対策について、ご検討や取組まれていることはありますでしょうか。
日本は地震が多い国で過去には阪神・淡路大震災や東日本大震災があり、2024年1月には能登半島地震(最大震度7)が発生し、大きな被害をもたらしました。
参考:平成8年以降の日本付近で発生した主な被害地震(気象庁)
今回は、今後発生が懸念される「南海トラフ地震」を取り上げ、製造業のBCP対策についてご紹介いたします。ぜひ、一読下さい。
南海トラフ地震~製造業への深刻な影響~
南海トラフ地震とは
南海トラフ地震は、駿河湾から日向灘沖にかけてのプレート境界を震源域として、過去に大きな被害を幾度ももたらし、1707年の「宝永地震」では推定M8.6以上の大地震が発生し、東海~九州に至る広範囲で甚大な被害をとなりました。そして、今後も発生する可能性が高いとされています。
・最大震度7
・想定される津波高最大30m超え
引用:「南海トラフ地震の歴史と特徴」気象庁より
9月26日に公表された政府の地震調査委員会は南海トラフ巨大地震が30年以内に発生する確率について計算方法と根拠データの見直しを行い、これまでの「80%程度」から「60~90%程度以上」に変更されたと公表しました。以前に比べ「60~90%程度以上」と幅のある確率となったが、上限をみれば90%と上がっており、防災対策を十分に検討していく必要があるといえます。
「南海トラフの地震活動の長期評価」を一部改訂 / 地震調査委員会
南海トラフ地震の影響
地震の発生により、関東から四国・九州にかけて広い範囲での災害が生じる可能性があります。さらに沿岸部では津波による被害が生じる可能性があり、製造業に与える影響は計り知れません。内閣府の報告書(令和7年3月公表)によると、南海トラフ地震による被害想定は死者数が最大約29.8万人、経済被害は資産等の被害が約224.9兆円、経済活動への影響が約45.4兆円と大きな被害が想定されています。
被害想定(R7最大クラスの地震)
引用:南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ報告書 説明資料より
製造業においては、工場施設の直接的な被害に加え、サプライチェーンの寸断による生産停止、物流網の麻痺による部品調達困難、従業員の被災による人的リソースの不足など、多層的なリスクに直面します。
東日本大震災では、自動車産業をはじめとする製造業で、一つの部品工場の被災が全国の生産ラインを停止させる事態が発生しました。
長野県の地震リスクと地理的特性
内閣府が3月に発表した南海トラフ地震による長野県の被害想定では、最大死者数が約80人、全壊・焼失建物3100戸の被害が予想されています。県内34市町村で震度6弱以上の揺れが想定されています。
しかし、長野県には製造業のBCP対策における重要な地理的優位性があります。内陸部に位置し津波被害はなく、首都圏や中京圏からのアクセスが良好で、豊富な水資源と安定した電力供給が確保できます。これらの特性を活かした戦略的なBCP対策が、事業継続において極めて重要な要素となります。
・首都圏、東海エリアのバックアップ生産拠点として機能
・中京圏の部品供給基地としての役割
・災害時の代替生産・物流拠点としての活用
参考:内閣府 防災情報のページ「定量的な被害量(都道府県別)」より
具体的なBCP対策
BCPとは、事業継続計画(Business Continuity Plan)の略で、南海トラフ地震といった甚大な自然災害などの緊急事態が発生した際に、重要な事業を継続・早期復旧させるための計画です。今後、発生する可能性が高い南海トラフ地震に対し、事業の被害を最小限に抑え、顧客からの信頼を維持し、企業の存続性を高めることができます。
現在稼働中の事業所における具体的なBCP対策についてご紹介します。
ソフト面での対策
①定期的な防災訓練の実施、対応方法を決めておく
地震発生時に身の安全を守るための行動を取れるよう定期的に防災訓練を実施することで避難経路・場所を理解し、地震が発生してもスムーズに避難でき、被害を最小限におさえることができます。
②連絡体制の整備
社内の緊急連絡先を整理し常にアップデートした連絡網を整えておくこと。また、地震の際に安否確認できるアプリなどツールを事前に入れておくことをおすすめします。
ハード面での対策
① 建築物の地震動対策
地震動による建築物の倒壊等の被害は、津波による浸水地域以外では死傷者発生の主要因です。近年の地震災害において、旧耐震基準(1981(昭和56)年以前)のものに倒壊等の被害が多くみられていることから、現行の基準への耐震改修及び建替えを検討する必要があります。
② 停電対策
停電対策においては、太陽光発電システムと蓄電池を組み合わせた自家発電設備の導入が有効です。最低限の生産機能を維持する体制を構築し、災害時の重要インフラ停止リスクを軽減させることが可能です。
③ 拠点の分散化
・災害リスク低いエリアへの拠点配置
生産拠点が1カ所に集中していると被災した場合には工場の機能が完全にストップしてしまいます。拠点や人材、サプライヤーを分散させることはBCP対策として重要な課題です。
・データセンターの設置
前述の「拠点分散化」にあわせて、データセンターの設置も近年注目されています。データセンターとは、サーバーやネットワーク機器などのITインフラを安全かつ効率的に保管・運用するために、専門の設備が整えられた施設のことです。重要なデータを損失しない為に設置する企業が増えています。
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まとめ
南海トラフ地震の脅威は現実的かつ切迫した課題です。しかし、適切なBCP対策により、単なる災害対策を超えて、持続的成長を支える戦略的基盤となります。
BCP対策を「コスト」ではなく「投資」として捉え、検討されてはいかがでしょうか。
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ヤマウラでは、既存工場の耐震診断・補強や太陽光などの停電対策のご提案が可能です。また、地域に根差した企業であり土地のご提案もさせていただきます。是非、ご相談下さい。
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