2023.10.11
消費するエネルギーを自前で賄う建築物【ZEB】
生活や産業に不可欠なエネルギーは、戦後の経済発展と人口増加により急激に消費量が増し、エネルギーを作る化石燃料の燃焼で大量のCO2が排出され地球の温暖化をもたらしました。その結果、自然環境に甚大な影響を及ぼし、世界各地で異常気象や自然災害が発生しています。
その対策の一つに、建築物の利用において発生するCO2を実質ゼロにするため制度が段階的に進めらています。
建物内で消費されるエネルギーの増加
日本国内の最終エネルギー(※注)の消費量は1973年から2021年の期間で1.1倍となりました。一方、この期間にGDPは2.5倍に増加し、経済の伸びに対して必要なエネルギーは削減され効率的に使われるようになりました。
しかし、現在も多くのエネルギーが消費され、国内の一次エネルギー(※注)の8割以上を石油・石炭・天然ガスの化石燃料に頼っており、脱炭素化に向け更なる「省エネ化」「再エネ化」「蓄電技術の推進」を進め、化石燃料の消費削減が急務であります。
最終エネルギー消費と実質GDPの推移
資源エネルギー庁 エネルギー白書2023より
1973年から2021年の期間で最終エネルギー消費量を部門別にみると、製造業等の「産業部門」は0.8倍と減少した一方、サービス業などの「業務他部門」と「家庭部門」は同期間に2.0倍、1.8倍と消費量が大きく増加しました。
業務他部門と家庭部門で、およそ国内の最終エネルギー消費量の1/3近くを占め、業務用及び住居系の建物で使われる動力・照明、冷房、給湯、暖房、厨房のエネルギーを下げることが大きな課題であります。
そこで、業務用建築物である事務所、デパート、宿泊施設、劇場、学校、病院、公共建物などでエネルギー消費を低下させる取り組みが制度化されました。それが「ZEB」になります。
一次エネルギー国内供給の推移
資源エネルギー庁 エネルギー白書2023より
ZEBとは・・・
ZEBとは、「Net Zero Energy Building」の略で、「ゼブ」と読み、“建物内で消費される一次エネルギー消費量を実質ゼロ以下にすること”を目標とした住宅系以外の建築物のことを言います。(住宅系は、ZEH:Net Zero Energy House/ゼッチ)。
それでは、“建物内で消費される一次エネルギー消費量を実質ゼロにする”とは、どのようなことでしょうか。
事業を建物内で行うには、多かれ少なかれエネルギーが必要になります。それをゼロにするには、自らがエネルギーを創出して必要なエネルギーを賄うことで実現させます。
まずは、自然の光や風を取り込み、環境負荷の低い建物にし、更に、空調・照明・給湯・換気・昇降機の設備の高効率化を進め一次エネルギー消費量を削減します。
その上で、建物内で必要となるエネルギーを太陽光発電などの再生可能エネルギー設備で賄い(創エネ)、実質、一次エネルギー消費量をゼロとします。
ZEBの定義
ZEBは、一次エネルギー消費量の削減割合に応じて4段階で定義しています。
1. ZEB
(ゼブ) |
省エネと創エネで一次エネルギー消費量が正味ゼロまたはマイナスにした建築物 |
2.Narly ZEB
(ニアリー・ゼブ) |
ZEBに限りなく近い建築物で、省エネと創エネにより従来の建物で必要とされる一次エネルギー消費量を25%以下まで削減した建築物 |
3.ZEB Ready
(ゼブ・レディ) |
ZEBを見据えた先進建築物で、省エネのみにより従来の建物で必要とされる一次エネルギー消費量を50%以下まで削減した建築物 |
4.ZEB Oriented
(ゼブ・オリエンテッド) |
延べ面積10,000㎡以上の建物でZEB Readyを見据え、省エネにより従来の建物で必要とされる一次エネルギー消費量を60%もしくは70%以下に削減し、加えて未評価の更なる省エネを図った建築物 |
環境省 ZEB PORTALより
国は、脱炭素社会の実現に向け、2050年時点で使用される建物全体で「ZEB」を目指すとし、中期目標として2030年に新築建物で「ZEB」を目指すと定めました。
住宅系のZEHも同様の考え方で、建物内で消費するエネルギーは業務用も居住系も自前で賄うことが今、求められています。
※一次エネルギーと最終エネルギー
一次エネルギー | 加工されていない状態で供給されるエネルギーで、石炭、石油、天然ガス、水力、太陽熱、原子力などを言います |
最終エネルギー | 産業部門や交通機関、家庭など需要家が消費する電気やガスなどのエネルギーを言います |
なお、一次エネルギーの石炭、石油、天然ガスなどを電気や石油製品に換える過程で必要となるエネルギーや送電や配送でロスするエネルギー分は最終エネルギーには含まれません。